第一章〜兄のコンポ〜

 

中学時代、なかなか音楽嫌いに歯止めが掛からない毎日が続いたが、
友人たちがMDコンポ、ポータブルMDプレイヤーなるものを買い始めた。
やはり、思春期、ほかの人が持っているものが気になり始める。
だが、買っても聴く音楽が無い。音楽がクラシックまたはJ-popしか知らないし田舎なのでCD屋が近くにない。
そもそもCDを買う金が無い・・・。金があってもCDではなくゲームなどに消えてしまう毎日が続いた。

ある日、私の隣の部屋にいた兄がコンポをくれた。
友人が持っているのはカラフルで派手なイルミネーションのコンパクトなコンポである。それと比べると・・・
真っ黒のコンポ、ずっしり重い。場所をとる。ホコリまみれ。地味。何一ついいものはなかった。
無論、くれるというのでもらったのはいいがまったく使わなかった。

高校生になり周りの友人、雑誌、インターネットの影響を受け、音楽に興味を持ち始める。
この頃ターニングポイントが訪れる。バンド活動である。
私は当初、パソコン操作ができるということで友人(悪友?)のバンドのホームページを作っていた。
メンバーとも親しくなり、ドラムとして加入することが決定。
ここから音楽にはまり込んだ。さらには学園祭でドラムとしてライブを経験。
音楽を身をもって体験し、音楽の幅広さ、奥深さ、おもしろさを知る。
バイトを始めて金銭的にも余裕が出たため、CDを買ったりレンタルできるようになった。
また、音楽を知ることでそれに携わる服やデザインなどにも興味が沸き、音楽のグローバルさに驚く。
この頃聴いた音楽はバンドの影響もあってかロック中心であった。
某洋服ブランドの影響かNIRVANAが大好きだった。その他、エレクトロニカなども聴き始めた。

この頃になると自宅で音楽が聴きたいという欲求があった。
主にパソコンやポータブルプレイヤーで聴いており、音質にはこだわらなかった。
だがコンポで聴いてみたいがコンポは高い。そこで兄にもらったコンポで聴いてみる。

CDを入れてみる。読み込みが非常に早い。ボリュームは重みがあり、滑らかである。そして音だし。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
衝撃が走った。音がまるっきり違う。素人の私でも分かる。パソコンのスピーカーやテレビのスピーカー、
友人の家で聞かせてもらったコンポの音とまるっきり違う音である。
音の響き、迫力、量感、今まで聴いたことが無いような音が聞こえてくる。小さい音の部分でも曖昧さが無く音全体にブレが無い。
すっかり兄のコンポのとりこになってしまった。何より驚いたのはもうホコリをかぶったこんな旧式のコンポで
こんなにいい音が出たということだ。 
そしてこれをきっかけにオーディオの泥沼にはまるということをまだ知る由も無かったのである。

 

naxt

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